足の症状とは

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足は、足部(足趾・中足部・後足部)と足関節からなり、28個以上の骨と多くの靱帯、筋・腱、神経・血管が緻密に組み合わさって体重を支えています。
歩く・走る・踏ん張る・方向転換する——私たちの毎日の動作を支える一方で、捻りや着地の衝撃、合わない靴、加齢や筋力低下などの影響を受けやすく、痛みや腫れ、ぐらつき、こわばり、しびれなどの不調が起こりがちです。

注意しなければならないのは、足だけではなく、足の痛みを我慢すると、歩き方が崩れて膝や腰まで負担が広がることも珍しくないことです。
早めに原因を確かめ、適切な治療とリハビリテーションで機能回復を図ることが重要になります。

当院では、痛みの部位だけでなく「なぜそこに負担が集中したのか」を評価し、薬物療法・装具・インソール調整・理学療法(可動域、筋力、バランス、動作指導など)を組み合わせたトータルな治療を行います。

主な足の疾患

足関節捻挫

足首を捻ってしまうことによって生じるもので、主に足首を内側にひねることで外側靱帯(前距腓靱帯など)が伸ばされたり傷ついたりしている状態が多くみられます。
スポーツをしている時のほか、歩行中に段差に躓いたり、ハイヒールで転んだりするなどして発症することがあり、比較的日常生活で発症しやすい外傷のひとつです。

症状としては、受傷直後の痛みや腫れ、体重をかけたときの痛みなどで、場合によっては内出血を伴うこともあります。
靭帯の損傷の程度によって1度(靭帯が伸びている)、2度(靭帯の一部が断裂している)、3度(靭帯が完全に断裂している)に分けられ、それぞれによって症状の出方や治療法が異なります。

治療としては、1度(軽度)の場合は応急処置であるRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を行い、経過を観察します。
2度(中等度)もしくは3度(重度)の場合は、サポーターやギプスなどの装具で足関節を固定し、安静を保つようにします。
痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬を使用していきます。
靭帯の状態によっては、靭帯修復や再建などの手術が必要となることもあります。

足関節捻挫の再発を予防するためには、運動前にストレッチをしっかりとすることや、足首周りの筋肉を増強するトレーニングをすることなどが重要です。
また足にあった靴を履くことも大切です。

足関節果部骨折(脱臼骨折)

足関節果部とは下腿の骨(脛骨と腓骨)と足の骨(距骨)を繋ぐ足関節部分にある内果、外果(いわゆる「くるぶし」)などのことで、スポーツや高い所からの飛び降り、交通事故などによって骨折することがあります。
日常生活でも頻度の高い骨折のひとつです。

症状としては、骨折の程度によって異なりますが、強い痛みが現れることが多く、足を着けない状態になります。
また骨折部位に組織液が溜まって腫れたり、内出血を起こしてあざのように変色したりします。
骨折によって骨がズレることにより、足が外側や内側に変形してしまうこともあり、歩行困難になることも少なくありません。

治療としては、ズレが少ない場合は徒手にて整復し、ギプスなどの装具で固定して安静にします。
ズレが大きい場合や、元の位置に戻せず関節が不安定になってしまう場合は手術が必要になります。
手術ではスクリューやプレートで骨折部分を固定し、術後も装具にて固定して安静にします。
治癒後は運動療法などのリハビリテーションにて機能回復を図り、日常生活やスポーツへの復帰を目指します。

距骨骨軟骨損傷(距骨骨軟骨病変)

距骨とは足関節の土台となる骨で、脛骨や腓骨などとともに足首を構成しています。
靭帯の中で唯一、筋肉が付着していない骨という特徴を持っています。
この距骨の表面を覆っている軟骨と、軟骨の下の骨の部分に障害が起きるのが、距骨骨軟骨損傷です。

足関節の捻挫などをきっかけに発症することもありますが、明らかな原因がなく発症することもあります。
ただスポーツ選手などによくみられることから、足首に慢性的に負担がかかることが原因ではないかとも考えられています。
このほか、血流障害や遺伝的要素が関わっているという指摘もあります。

症状としては、軟骨が剥がれたりか欠けたりすることで、鈍い痛みを感じるとともに、関節内深部でズレる感じや異物感、不安定さを感じることがあります。
運動をするとズキズキと痛みが強まったり、足首がこわばったりすることもあります。
進行すると軟骨がすり減ってしまうことで、足首で音がしたり、力が入らなくなったりといった状態になる場合もあります。

治療としては、損傷の状況や程度によって異なります。
捻挫などの外傷による場合は、ギプスなどの装具で固定して安静にします。
スポーツによる場合は、しばらくスポーツを休止します。
痛みや炎症がある場合は、消炎鎮痛薬による薬物療法を行います。
痛みが取れた後は、関節の可動域を維持、改善するための可動域訓練や筋力増強訓練などのリハビリテーションを行うことが大切です。
こうした保存療法では症状が改善しない場合は、手術が必要になることもあります。

外反母趾

外反母趾は、足の親指(母趾)が小指側へ曲がり、親指の付け根が「くの字」に変形する状態のことです。
原因としては、足に合わない靴や幅の狭い靴、高いヒールの靴を履き続けること、また足に負担のかかる歩き方などによって、母趾の付け根にある関節(中足趾節関節)が変形するためと言われています。
さらに、もともと扁平足や開張足であることや、関節が柔らかい、母趾が人差し指より長いなど、遺伝的要因も関わっていると考えられています。

外反母趾では、靴との摩擦によって痛みが生じるようになり、出血や潰瘍を引き起こしたり、親指の爪が人差し指に食い込んでしまったりすることもあります。
外反母趾は進行性で、悪化すると靴を履いていないときも痛むようになることもあり、さらには中足趾節関節が亜脱臼を起こして歩行困難になることもあります。

治療としては、まず原因となっている靴の使用をやめ、足に合った靴を選ぶことが重要で、つま先の狭い靴やハイヒールは避けるようにし、つま先にゆとりのある靴を履くようにします。
扁平足であったり、開張足であったり、加齢による筋力低下などで足のアーチ構造が崩れると、外反母趾のリスクが高まるとされているため、アーチをサポートするインソール(足底板)での装具療法を行います。
痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬を用いる場合もあります。

こうした保存療法では症状が改善せず、変形が進んで歩行困難になるなど、生活に支障がある場合は、手術による治療も検討します。

扁平足

足の裏側の「土踏まず」と呼ばれる部分は、通常、アーチ状になっていますが、これがなく、足の裏が平らでべったりとついてしまっている状態が扁平足です。
扁平足では歩行時の衝撃吸収がうまくいかず、足が疲れやすくなったり、外反母趾を引き起こしたりします。
さらに重症化すると歩行障害を起こし、足首や膝、腰などに負担がかかって膝痛や腰痛を引き起こすこともあります。

幼児期にも扁平足はよくみられますが、これは足関節周囲の靭帯が緩むことで生じており、7~8歳頃までに自然に足裏のアーチ構造が形成され、扁平足が解消されることがほとんどです。
一方成人の場合は、加齢による靭帯の変性や体重の負荷などによって靭帯が障害されて起こります。
筋力の弱さや、運動不足、さらには長時間の立ち仕事でも原因となることがあり、特に中年以降の女性に多くみられます。
ほかに、関節リウマチや神経麻痺、先天性疾患などの病気や外傷が原因となることもあります。

扁平足の治療は程度や原因によって異なりますが、基本的には保存療法を行います。
軽度の場合は、足底板(インソール)による装具療法や、足裏の筋肉を鍛えたり、関節可動域を拡大したりする運動療法を行っていきます。
足底板はアーチ構造をサポートすることで、足への負担を軽減します。
また運動療法では、歩行改善の訓練のほか、タオルを足の指で手繰り寄せるものや、足指じゃんけんなどが有効です。
痛みがある場合は消炎鎮痛薬を使用します。

内反足

足先が内側・下方へ向く変形で、出生時にみられる先天性(乳幼児期に見つかることが多い)のものと、神経・筋疾患(脳性麻痺やポリオ)や外傷などに伴う後天性のものがあります。
一般的に内反足というと先天性内反足を指しますが、男児に多く、男女比は2:1とされています。

症状としては、足首の硬さに加え、足が下を向く「尖足」、足の裏が内側を向く「内反」、足先が内側を向く「内転」、足の裏がへこむ「凹足」といったものがあります。
そのままにしておくと、変形が強い場合は足裏が地面に着かず、足の縁や甲で歩かなければならなくなるなど、著しい歩行障害を生じます。

先天性内反足の治療は、早期に開始することが非常に大切です。
基本的には足の変形を矯正するギプスを装着し、固定します。
一度に矯正するのではなく、定期的な間隔(週1回程度)でギプスを調整し、2~3カ月かけて徐々に矯正していきます。
ある程度の矯正ができたら、元に戻ってしまわないよう、装具を装着します。

こうした保存療法で改善できず、変形が残る場合は手術を検討します。
手術後も成長が終わるまでは何らかの装具が必要ですが、適切に治療を行っていけば、スポーツをすることも可能になります。

モートン病(モートン神経腫)

モートン病は、足の指の付け根、とくに中指と薬指の間で、痛みやしびれが発症する神経障害です。
中年以降の女性に発症することが多くなっています。

原因としては、中腰やつま先立ちの姿勢を長時間続けること、つま先が細くヒールが高い靴を履くことなどによって、足の付け根の関節(MP関節)が、神経を圧迫することによると考えられています。
圧迫された部分の近辺に、神経腫と呼ばれる、痛みを伴う腫瘤ができることもあります。
ほかにも神経を圧迫する要因として、外反母趾や扁平足、ガングリオンなどがあります。

治療としては、基本的に保存療法を行います。
原因となるようなタイプの靴は避け、ソールの軟らかい、ヒールの低い靴を履くようにします。
また、つま先立ちのような姿勢を続けないように注意しましょう。
インソール(足底板)を用いた装具療法も有効で、神経の圧迫を軽減し、痛みを和らげるために有効です。
さらに、足の指のストレッチやマッサージなどの理学療法も効果が期待できます。
痛みが強い場合、軽減しない場合は、薬物療法として消炎鎮痛薬(NSAIDs)や、局所神経ブロック注射を使用する場合があります。

これらの保存療法で症状が改善しない場合は、神経剥離術や神経腫摘出術などの手術療法を検討します。